■たわごとですかーっ!!■



▼02/02/16【じゃれる】

ドラマを見ていると、よくこういう場面に遭遇する。
海でじゃれる男女。
まったく海などこれっぽっちも感じさせない場面からいきなり海が現れる。そしてじゃれる二人。追いかけあったり、海の水を掛けあったりして戯れる男女。なんとも、仲むつまじい光景である。
だがしかし、見ているうちなにかしら次第にモヤモヤ感に襲われ、そのうち納得がいかなくなり、そして突然、怒りがこみ上げてくる。
「いつもいつも海ってことはないじゃないか」
なぜかじゃれるのは海と相場が決まっているのだ。これはいかがなものか。
ややもすると、いったいどこから出没してきたのか、いままでこれっぽっちも見かけなかった犬なんかもいたりする。その犬もけっしてブルドッグとかパグ犬などではない。なぜかゴールデンレトリバーだ。顔がつぶれているのはまずいらしい。
そうかと言って、ゴールデンハムスターでは、なんともたわむれ甲斐がないのではないか。その昔、ゴールデンハーフという3人組がいたが、この際そんなことはどう でもいい。とにかくゴールデンレトリバーなのだ。

なにしろこれをまったく疑問にも思わない視聴者も視聴者だが、製作する方にもちょっと問題があるのではないか。これからの世の中はリアリズムな時代である。矛盾はとことん排除しなければならない。
そう言った観点から言うと、じゃれるところが海でなくてもいいはずである。
だったらそれが、山だっていいじゃないか。
薄暗い、雑草の生い茂った密林の中を追いかけ回す二人。ふと向き合い、互いに「キャーキャー」言いながら掛け合うのは海の水ではない、この場合、そう、泥だ。見ると、お互いの衣服、顔はドロまみれ。
そして男はさっと彼女を抱え上げ、いたずらな表情を浮かべながら、「せいのっ!」というかけ声と共に彼女を落とす。しかしそこは海ではない。山だ。
「やられた〜」と苦笑いを浮かべながら崖を転げ落ちる彼女。腕の一本や二本折れているのかもしれない。
「わっはっは」と男は笑い、おもむろに木に登る。山ならではである。木の上から「ここまでおいで〜」と手招きするのもいいかも知れない。
ふと見ると、一緒に駆けずり回っている動物がいる。ゴールデンレトリバーではない。 イノシシだ。ゴールデンイノシシという種類がいるかどうかは分からない。動きが一直線なのが玉にきずだ。
なにしろここは山だ。それを誰も不思議に思わないし、とがめるものもいない。
とにかくまるで人間のじゃれ合いとは思えない壮絶なドラマがそこに展開される。

はたから見て、山でじゃれあうのは、ちょっとまずい。


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