■たわごとですかーっ!!■



▼01/11/2【真夜中の貴重な経験】

人にはそれぞれ色々な寝方がある。オーソドックスに上を向いて寝る。横を向いて丸 まって寝る。うつ伏せに寝る、など様々だ。
不用意にうつ伏せになどなって寝てしまうと、鼻血が出てしまうのでオレの場合要注意だ。オレのことなどどうでもいい。ほっといてくれ。
また、寝ぞうも人それぞれ色々あるものである。
何度も寝返りをうつ。いつの間にか上下が逆になる。突然取り憑かれたように腕 立て伏せをする。まさに人それぞれだ。
ただ、取り憑かれたように腕立てをするのはオレくらいのものだから、そっとしておいてくれ。
しかしながら、これら自分の寝ぞうは自分ではけっして分かるものではない。それはなぜか。なぜならば、寝ているからだ。
したがって、自分の知らない自分の寝ぞうを知ろうとするとき、それは他人か らその情報を得ることとなる。その晩、オレはその情報源となった。
仲間5人で旅行へ行ったときのことである。
布団に入ってからもしばらくは、皆でくだらない話をしていたのだが、旅行 疲れも相まって、いつしか一人二人と寝てしまい、オレもまさに深い眠りに入ろうとし ていた。その瞬間、思いも掛けない事態が目の前に起こったのである。
隣に寝ていたKがいきなりムクっと立ち上がったのだ。
いったい何が起こったのだ。オレは目を丸くし体を半起こしにして見ていると、なんとKは壁に向かってのそのそ歩き始めたではないか。そしてタンスにぶつかるK。今度は何を思ったか、こともあろうにそのタンスの隙間に入り込もうとしているのである。
両手の先を、必死にタンスとタンスの隙間に潜り込ませようとするK。その一生懸命さは認める。がしかし、いくらなんでも、そんな狭い隙間に入るってのは無理があるんじゃないか。だいいち、入ったからといってどうなるというのだ。
そんなオレの心配もどこ吹く風、ただただタンスと格闘を続けるK。
だがしかし思った通り、いくら頑張っても、いくらもがいても、そのタンスの隙間は狭いまま、人間の入り込む余地などない。ようやくKは諦め、その場でバタンと倒れ込むようにして再び寝てしまったのである。
それだけではなかった。
今度は、Mである。
こいつも突然ムクっと起きあがった。今度はどこに行くのかと思ったその瞬間、隣に寝ていたSの腹にいきなり「いっぱーっつ!」とか言って正拳をたたき込んだのである。気合いの言葉通り、1発だけだったのは不幸中の幸いだったが、いきなり正拳を入れられたSはたまったものではない。「うっ」とうめき声を漏らし、その場でうずくまっているではないか。加害者のMは。何食わぬ顔で再びバタンと寝てしまった。
オレは慌てて、正拳を入れられたSに掛け寄り、「大丈夫か」と声を掛けた。
すっかり寝てました。イビキかいて。
いい加減、もう起き出すやつはおらんだろうなあ、などと不安に思いながら見渡すと 一人真上を向いて、我感せずと寝息を立てているYがいる。
ふと見ると、胸の辺りが妙に膨らんでいたので、何かと思い布団をめくってみた。
胸の前で手を合わせていました。
「信心深いんだね。」と、Yに声を掛ける勇気がオレにはなかった。

結局その晩は次は何が出るかと気になって、まったく眠れなかった。そんなファンタジーな真夜中であった。


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