■たわごとですかーっ!!■



▼01/9/18【こんな秋】

秋だ。季節はいま、全国的に秋である。だれがなんと言おうと秋である。
そこまで気張って言うほどのものでもないが。
秋と言えば、スポーツの秋、食欲の秋、読書の秋、と色々あることになっている。なんでこう日本人というやつはまったくもってなんだかなあ、である。なんの秋だっていいじゃないか。
つまるところ「芸術の秋」です。
これだ。オレにとっての秋。それは何を隠そう、芸術の秋。
と、言ってもこれはあくまでもオレに取っては憧れの秋。なにしろ自分にとって、「芸術」と言うもの。これほど縁遠いものがありましょうか、ってなくらい縁が遠い。だからなおのこと、芸術の秋への憧れは募るのである。
別にわざわざ秋に芸術じゃなくても、と言う気もしないでもないが、「芸術の冬」とか「芸術の春」とか、ましてや「芸術の梅雨時」なんて聞いたことがないじゃないか。なにしろ芸術は秋がかっこいい。

さて、実を言うとこんなオレでも、芸術的な経験をしたことがある。自慢じゃないが、ろくろを回して焼き物を作ったことがあるのだ。
確かにたいした自慢じゃない。しかし、ちょっとは自慢したい。それがお茶目な男心。

近くに瀬戸市という「せと物」で有名な町があり、そこの、ある施設の焼き物体験教室なるものへ足を運んだのである。なかば、ほとんど冷やかしぎみに、せっかくだから焼き物でも作ってみようかと、突然そういう気分になったのだ。
どうしてそんな気分に?、といまさら言われても、いまとなっては思い出せない。とにかく、そういう気分になったんだからしょうがないじゃないか。

さて、粘土をろくろに載せ、回しながら手で形を整えていく分けだが、なかなか、ろくろと言うもの、見た目以上に扱いが難しいったらありゃしない。くるくる回るろくろにまるで、くるくるパーとでも言われているかのようにおちょくられているのである。
そもそも電動なのがまたいけない。もう少しゆっくりとか、その辺は勢いを付けてとか、注文を付けても、さっぱりろくろはその注文を受け付けてくれない。なにしろ微妙な調整がなかなか思うようにいかないのだ。自分の気持ちとは裏腹に、そのろくろはひたすらたんたんと回り続けるのである。まったくマイペースなやつだ。
オレは、そんな冷静でクールな男になりたい。クールにくるくる回ってる男、ってのは、ちょっと問題ですがね。
なにしろまずはそれが第一の関門であった。

四苦八苦、没頭しながら、製作作業は更に続く。
これじゃまるで芸術家じゃないか、そう勘違いしながら。

ふと気付くと注ぎ口が付いていた。注ぎ口ときたら、取っ手を付けるしかないではないか。取っ手を付けました。こともあろうに3つも。
いったいオレは何を作っているのだ。それはもう摩訶不思議な、壺とも花瓶とも思えないような、もしかしたらジョウロかもよ、とも思うような代物にそれはなりつつあった。
特筆すべきは、インストラクターのおじさんがへらへら笑っちゃうほど、そのジョウロ(ジョウロで決まりかよ)は異様にでかかったことだ。
それでもその奇怪な固まりは曲がりなりにも形になり、「これは分かる奴にしか分からない芸術品だ」などと、自分でも分けの分からない自己満足に浸っていたのだった。その後、思いもかけないことがこの身に降り掛かることも知らずに。
そして、、、、、

「重さかよ」

思わず口からこぼれた。
そう、焼き料金は、重さで決まるのであった。

よ〜く、説明は聞きなさい。
そりゃ、あんたじゃないか。

かくして、置物にも結局ジョウロにもなり得なかったその芸術作品には、6千円なにがしの値が付いた。
芸術の秋。それは予想以上にお金の掛かる秋だ。


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