デラ・ホーヤのさらに続く厳しい試練

WBC世界ウエルター級タイトルマッチ 
オスカー・デラ・ホーヤvsシェーン・モズリー   2000年6月18日

ャンピオンはデラ・ホーヤ、一瞬、あれ、昨年たしか世界統一戦で
トリニダードに初の黒星を付けられ、チャンピオン取られたんじゃ
なかったっけ?と思ったのだが、そのトリニダードが直後に階級を
上げたために、再びデラ・ホーヤが王座に付いたらしい。

今回の挑戦者はシェーン・モズリー。デラ・ホーヤとは異なり、裏街道の
地味路線を歩んできた選手。しかし、その戦績はすばらしく、
34戦全勝、しかも32KOという凄いKO率を誇る。
IBF世界ライト級タイトルを8度防衛したという実績も光る。
過去の試合のダイジェストを見ても、かなりのスピードとパワー
を持ち合わせているようである。
巷では、デラ・ホーヤ危うしという声が方々から聞こえたと言うが
それもうなづけるような実力と実績である。
モズリーは少し前から階級を2階級上げ、今回勝てば2階級制覇達成と
言うことになる。

この二人、実はアマチュア時代に一度闘ったことがあるらしく、
そのときは、モズリーの勝ち。まさに因縁の対決とも言える。

チャンピオン、デラ・ホーヤは、昨年のトリニダード戦での
敗戦そして反省を踏まえ、ファイトスタイルを自分から積極的に
先に仕掛ける戦法に切り替えた。
それは前回の復帰戦でも現れ、見事ダレル・コーリーをKOに葬っている。

さてゴング。
予想通り、デラ・ホーヤが前へ前へと出る。しかしモズリーの
スピードはやはりかなりのもので、うかつに出ると、一発
食いそうな、そんな試合運びである。
試合はそれから終始、デラ・ホーヤがプレッシャーを掛け
それをモズリーが持ち前のスピードで交わし、パンチを返すという、
一進一退の目の離せない攻防が続く。採点もかなり微妙だろう。
しかし、前へ出ている分、このまま行けばデラ・ホーヤ有利かな、
と言った感じもした。
しかし10Rで山が訪れる。モズリーのパンチがデラ・ホーヤの腹に入り、
デラ・ホーヤの動きがそれから一気に悪くなるのである。
そして最終ラウンド、デラ・ホーヤが一気に仕掛けるも、モズリーが
それに真っ向から対し、しかも明らかにモズリーのパンチの方が、的確に
デラ・ホーヤを捕らえる。動きも断然にモズリーの方が良い。
そしてそのまま終了のゴング。モズリーは自分の勝利を確信し、
観客にアピール。しかし傍目から見ても判定はかなり難しい。
そして判定。
まずはモズリーの名前が上がる、観客からどよめき。
次にデラ・ホーヤの名前、今度は歓声が、、、
そして運命の最後の判定、場内は静まり返る。
「エン、ニュー!」と叫ぶ、リングアナの声。
モズリー新チャンピオンの誕生、そして2階級制覇達成の瞬間である。

デラ・ホーヤは、素直に負けを認めるインタビュー。
トリニダード戦で負けたときと同じく、笑顔である。
しかし内心穏やかでないのは明白であろう。

たぶん9Rまではややデラ・ホーヤが優勢だったと思う。
しかしその貯金はそれ以降ですべて使い果たしてしまったようだ。
判定ではあったが、試合内容的にはまったく退屈しない、終始
緊迫したほんとにレベルの高い内容だったと思う。

この試合の契約時点ですでに再戦が決定していると言う。
デラ・ホーヤに取っては、絶対に2度続けて同じ相手に
負けるわけにはいかない。まさに正念場である。
どちらにしても、今回のこの敗戦は、昨年のトリニダード戦
以上に重くのしかかることに間違いはない。